原判決で特許異議の申立てをなし,特許庁は平成13年7月4日付けでで上記特許の請 求項1ないし3に係る特許を取り消すとの決定をした(本件特許取消決定。
控訴人が控訴人に対し,上記本訴請求(東京地裁平成20 年(ワ)第7416号事件),東京地裁平成20年(ワ)8836号事件(20 −8836号事件),東京地裁平成19年(ワ)第23460号事件(19− 23460号事件),東京地裁平成19年(ワ)第23951号事件(19− 23951号事件)に係る各訴えの提起は,被控訴人に対する不法行為に当た るとして,弁護士費用の合計額105万円及びこれに対する反訴状送達の翌日 である平成20年5月2日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の 支払を求めた事案である。
3 平成20年9月30日に言い渡された原判決は,本訴請求に係る訴えは信義 則に反する不適法なものであるとして却下し,一方,反訴請求は理由があると してその全部を認容したものである。
そこで,上記判決に不服の控訴人が,本 件控訴を提起した。
第3 当事者双方の主張 1 当事者双方の主張は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第 2「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。
2 控訴人の主張 詳細は,別紙「控訴理由書」記載のとおりであるが,これを整理すると次の とおりである。
(1) 本訴請求について ア本件特許取消決定は,取消理由を有するところ,原判決がこの点につい ての証拠である甲6(実公昭46−5289号公報)を排斥し,審理判断 しなかったのは違法である。
原判決は「そもそも,甲, 6公報の存在が,前訴事件及び前訴事件 における裁判所の判断を左右するに足る事情であるとは認められないので あって,この点が,前記特段の事情に該当するものであるとはいえな い。
」(25頁16行〜18行)と判断し,前記甲6(実公昭46−528 9号公報,考案の名称「直接通電式加圧焼結炉」,出願人株式会社島津製 作所,出願日昭和41年8月30日,公告日昭和46年2月24日)を 証拠から排斥し,判断しなかった。
しかし,本件特許取消決定は,本件特許出願につき平成7年3月14日 になされた手続補正が要旨変更補正に当たることを取消理由の前提とする ものであるが,その手続補正の内容は,特許請求の範囲の記載を「放電焼 結装置において,電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端 部を支持する構造」とするものである。
そして,本件補正に係る技術内容 は,甲6公報に記載された内容であり,その公告日である昭和46年2月 24日に既に公知となった技術内容である。
そうすると,上記手続補正は要旨変更には当たらず,これは控訴人が証 拠として提出した甲6から明らかであり,前訴事件,前訴事件はいず れもこの点について判断していないから,甲6公報を証拠から排斥した原 判決は,甲16の最高裁判例(最高裁昭和30年(オ)第507号昭和32 年10月31日第一小法廷判決・民集11巻10号1779頁,書証を排 斥するについて理由不備の違法があるとされた一事例)に照らし違法であ る。
イ原判決は,本訴は前訴事件,前訴事件とは訴訟物は別であるとしな がら,同一の不法行為に基づく損害賠償請求であるとした。
しかし,本訴 事件は甲6公報の公告日(昭和46年2月24日)を請求原因とするもの であるが,前訴事件,前訴事件は,甲6の公告日を請求原因とするも のではないから,この点から訴訟物は別なのであり,その主張を蒸し返す ものでもない。
原判決は誤りである。
ウそもそも,本訴請求は,前訴事件,前訴事件が判断しなかった甲6 公報記載の公知技術及びその公告日を請求の原因とした損害賠償事件であ り,これを不適法な訴えとするのは,既判力を規定した民訴法114条, 二重起訴を禁止した民訴法142条に反しない本訴請求について,事実誤 認及び法判断の誤りをし,公平を欠き,憲法76条2項に反する。
甲29(石原豊昭ほか「訴訟は本人で出来る」自由国民社,12頁)に も「…権利主張の合理的な, 方法としてのビジネスが訴訟である。
税金を 払っている国民として大いに裁判所を利用して,訴訟ビジネスをやるべき であろう。
」とも記載されている。
この記載からしても,原判決の「裁判 制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被 告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である。
」(27頁 12行〜14行)とした判断は誤りである。
エ本件は継続して発生する本件放電焼結機に対する事件であり,一個の不 動産に関する最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10 年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁,金銭債権の数 量的一部請求訴訟で原告が残部請求の訴えを提起することの許否)を適用 するのは誤りである。
加入員資格喪失届
特別掛金の賦課徴収について,法138条5項は,基金の設立事業所が減少する場合において,当該減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することとなるときは,当該減少に係る設立事業所の事業主から特別掛金を一括して徴収するものとする旨を規定し,これを受けて,規約附則21条は,この基金は,設立事業所から脱退の申出があったときは,当該事業所に対して,脱退事業所に係る特別掛金の納入の告知を行うものとする旨を規定している。
しかしながら,前記前提事実並びに証拠(甲3,17,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,従業員の一部の退社に伴い,それらの者についての加入員資格喪失届を被告に提出した(本件届出行為)だけで,原告事業所の脱退の申出はしていないこと,本件届出行為後も原告事業所には被告の加入員として5名が残っていること,被告は,本件処分の後も平成15年9月19日に,原告に対して普通掛金等の納入を告知し,原告からその納付を受けていることが認められる。
以上によれば,本件届出行為後においても,現実に原告事業所が被告の設立事業所として存続しており,被告自身も存続しているものとして扱っていたといえ,本件が,法138条5項の「設立事業所が減少する場合」及び規約附則21条の「設立事業所から脱退の申出があったとき」に文言上該当するものではないことは明らかであるから,本件について上記各規定を直接適用することはできない。
(2) 反訴請求に対し 甲30( 当事者」と題する「書面,平成20年11月25日控訴人代表者 A作成のもの)のとおり,前記の20−8836号事件は控訴人の放電焼 結機の図面原紙を横領したことに対する事件,前記の19−23460号 事件は控訴人の放電焼結機の図面の控訴人名称を被控訴人が改変した私文書 偽造事件,前記の19−23951号事件は被控訴人の債務不履行に関す る事件であって,これらを理由とする反訴請求は,いずれも本訴請求と関連 せず,民訴法146条に規定する反訴要件を欠くものであるから,原判決は 取り消されるべきである。
また,被控訴人の反訴請求に係る弁護士費用は, 弁護士会の報酬規定を超え,相当でない。
3 被控訴人の主張 (1) 本訴請求に対し 控訴人の主張はいずれも否認する。
原判決が認定したとおりであり,本訴請求は前訴の蒸し返しであり,信義 則に反する。
(2) 反訴請求について 原判決認定のとおりで誤りはない。
弁護士報酬に関し,現在弁護士会規定 は存在しない。
第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本訴請求に係る訴えは,不適法な訴 えであり,被控訴人の控訴人に対する反訴請求は理由があると判断する。
その 理由は,以下のとおり付加するほか,原判決記載のとおりであるから,これを 引用する。
2 本訴請求について (1) 控訴人は,原判決が控訴人が証拠として提出した甲6(実公昭46−5 289号公報)を排斥し,本件特許取消決定に対する甲6に基づく取消理由 について審理判断しなかったのは違法である旨主張する。
しかし,原判決24頁19行〜25頁1行において説示するとおり,本訴 請求は前訴事件及び前訴事件における請求と同一の不法行為(被控訴人 が本件特許異議申立てを行ったこと)による損害賠償請求権に基づく請求で あり,実質的に前訴事件及び前訴事件を蒸し返すものであって,信義則 に反するものである。
そして,原判決も指摘するように「甲6公報の存在が, 前訴事件及び前訴事件における裁判所の判断を左右するに足る事情であ る」とも認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 次に控訴人は,本訴請求は継続して発生する放電焼結機に対する事件で あり,一個の不動産に関する最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第84 9号平成10年6月12日第二小法廷判決)を適用するのは誤りである旨主 張する。
しかし上記判例は,確かに不動産である用地の買収に係る報酬金等の支払 請求に関する事案であるものの,その判決要旨は「金銭債権の数量的一部請 求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは,特段の事情がな い限り,信義則に反して許されない」というもので,本件と同じく金銭債権 に関する判例であって,原判決も説示するように本件事案に適切であるから, 控訴人の上記主張は採用することができない。
3 反訴請求について (1) 控訴人は,被控訴人がなした反訴請求について,関連性がなく反訴の要 件を欠くと主張する。
しかし,控訴人は,平成20年8月26日の原審第4回口頭弁論期日にお いて「被告(反訴原告)の反, 訴提起について,関連性がなく反訴の要件を 欠くとの主張を撤回する」(口頭弁論調書参照)と陳述しているから,訴訟 手続に関する異議権の喪失を定めた民訴法90条に照らし,以後,一審原告 たる控訴人は,反訴要件を欠くとの主張はできなくなったというべきである。
のみならず,念のため反訴要件の存否を検討すると,原判決が26頁8行 〜31頁14行で説示するとおり,本訴請求は過去に訴えを提起し敗訴した 事件(前訴事件及び前訴事件)と同一の不法行為に基づく損害賠償請求 の残部請求に係る訴えであり,20−8836号事件は控訴人が所有権を 有し被控訴人が占有する図面及び部品図面を横領したことが不法行為に該当 するとすることに係る訴え,19−23460号事件は放電プラズマ焼結 機の部品図から控訴人代表者名の署名部分を削除する等の行為が私文書偽造 の不法行為に該当するとすることに係る訴え,19−23951号事件は 控訴人代表者設計の放電焼結機を納入する旨の契約が締結されていたにもか かわらず設計図を詐取するなどしたことが同契約の債務不履行に当たるとす ることに係る訴えであり,これらの訴えの提起が不法行為に当たるかどうか に関する主張立証は,本訴請求の防御方法と関連すると認めるのが相当であ るから,上記反訴請求が民訴法146条にいう反訴要件に欠けることはなく, 控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 次に控訴人は,被控訴人の請求する弁護士費用は弁護士会の報酬規定を 超え,相当でない旨主張する。
しかし,原判決が31頁18行〜32頁10行で説示するとおり,被控訴 人が本訴請求及び上記各事件の応訴のために要した弁護士費用の合計額は控 訴人の上記不法行為と相当因果関係のある損害であり金額的にも相当と認め られるから,控訴人の上記主張は採用することができない。
3 結語 以上のとおりであるから,控訴人の被控訴人に対する本訴請求に係る訴えは 信義則に反する不適法なものとして却下すべきであり,被控訴人の控訴人に対 する反訴請求は認容すべきである。
よって,これと結論を同じくする原判決は相当であって,控訴人の本件控訴 は理由がないからこれを棄却して,主文のとおり判決する。
主文 1 本件訴えのうち次の各部分をいずれも却下する。
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